それでは今まで紹介したUFC公式HPのデータを使って実際にファイターの戦力を計算で出す方法をお教えします。


ここからがキカワメトリクスUFCの真骨頂ですね。


分析に必要なデータは

・戦績データ

・試合結果データです。


VSデータは使用しません。


本当ならエクセルを使うと非常に出しやすいのですが、ここではあくまで紙と鉛筆を使ってでも出せる方法をお教えします



総合格闘技であるUFCの能力分析をする際には


その能力を大まかに

・打撃

・組技

の2つの属性に分けて考えます。


そして

たとえば打撃属性の中でも


・有効打数

・全着弾数

・打撃ディフェンス


の3つに分けて考えられます。


そしてそのすべてにおいて「優位性」というものを出すことが必要となります。


優位性とは、その項目において自分が獲得した点数が、自分と相手の合計値の中でどれほどの割合なのか、という数値になります。


優勢性は0~1の間の数値で表し、数値が高いほど優秀となります。


ではまずはUFCファイターの1人、ロビー・ローラーを例に

打撃属性の中で最もウェイトの高い評価項目である「有効打」の優位性を調べてみましょう。


これを出すために使うデータは戦績データの中のストライキングの数値、その中で試合結果データが残っているところまでです。

※試合結果データは約2年ほどで消去されます。


なのでまずは戦績データのイベント名のところを新しい方から順にクリックしてどの大会までが試合結果データが残っているのかを調べます。


イベント名をクリックして試合結果データではなくVSデータが表示されたら、それはもう試合結果データが消えているということになります。


2015/12/12 の時点でロビー・ローラーの戦績の中で試合結果データが残っているものは以下の通りでした。


 

 

この全7試合の中で、

ロビー・ローラーのストライキングの合計は556

それに対し、対戦相手7人の合計は513

 

本人の数値を本人+対戦相手7人の数値で割ると…

556÷(556+513)=0.520

ロビー・ローラーの有効打優位性は0.520になります。

 

もしこの数値が0.5だったらロビー・ローラーは有効打数において、今までの対戦相手たちと全く互角になります。

0.5より上なら優位。

0.5より下なら劣位となります。

 

 

次にグラップリングテクニック優位性を調べてみましょう。

ロビー・ローラーのストライキングの合計は8

それに対し、対戦相手7人の合計は20

 

本人の数値を本人+対戦相手7人の数値で割ると…

8÷(8+20)=0.286

ロビー・ローラーのグラップリングテクニック優位性は0.286になります。

 

さて、ここまで出だした

有効打優位性、グラップリングテクニック優位性の2つは

それぞれが

打撃属性、組技属性の上位加点要素です。

 

なのでより綿密な分析をするために、それぞれの属性の下位加点要素も計算して見ましょう。

 

下位の加点要素については

例えば打撃属性では

・全打撃数

・打撃ディフェンス 

の2つ

組技属性では

・コントロール

・テイクダウンディフェンス

の2つになります。

 

いずれもデータは試合結果データからとることになります。

 

試合結果データの表示の仕方は前頁を参考にしてください。

 

まずは全打撃数の優位性を出します。

 

ロビー・ローラーの試合結果データが残っている7試合、すべての全打撃数の合計と被弾した全打撃数の合計を出します。

 

そうするとこの全7試合で、

ロビー・ローラーの全打撃数の合計は661

それに対し、対戦相手7人の合計は589

 

(本人の数値)÷(本人+対戦相手7人の数値)という計算をすると…

661÷(661+589)=0.529

ロビー・ローラーの着弾数優位性は0.529になります。

 

 

それでは次に打撃ディフェンスの優位性を出してみましょう。

 

打撃ディフェンス率を出すには

まず敵7人の通算命中率を出します。

敵7人の通算命中率=敵の有効打の合計÷(敵の有効打の合計+敵の空振りの合計)

 

試合結果データの中の有効打のすぐ下にある

「of~」となっている数字が「有効打+空振り」の値となります。

 

7つの試合の敵の有効打の合計は 513

7つの試合の「有効打+空振り」の合計は 1327

敵7人の通算命中率=513÷1327=0.387

 

そして1からこの敵7人の通算命中率を引いた数、

1-0.387=0.613

↑これがロビー・ローラーの打撃ディフェンス率となります。

 

但し、打撃ディフェンス優位性を出す際は、この打撃ディフェンス率同士を比べるのでなく、お互いの通算命中率同士を比べることになります。

 

なので次はロビーローラーの命中率を出します。

 

7つの試合のローラーの有効打の合計は 556

7つの試合の「有効打+空振り」の合計は 1191

ロビー・ローラーの通算命中率=556÷1191=0.467

 

↑の数値をもとに

(本人の数値)÷(本人+対戦相手7人の数値)という計算をすると…

0.467÷(0.467+0.387)=0.547

ロビー・ローラーの打撃ディフェンス優位性は0.547になります。

 

これでロビー・ローラーの打撃属性の優位性

・有効打優位性…0.520

・着弾数優位性…0.529

・打撃ディフェンス優位性…0.547

3つ全てを出すことができました。

 

なのでこれからこの打撃属性の優位性をすべて合わせた

「打撃総合優位性」

を出すことにします。

 

上記3つの打撃属性の優位性のうち

・有効打優位性

が上位の加点要素で、

 

・着弾数優位性

・打撃ディフェンス優位性

の2つが下位の加点要素についての優位性となります。

 

なので当然、総合的な能力に加味される割合も変わってきます。

 

ニュージャージー州アスレチックコミッションのガイドラインではこれらが上位・下位の関係にあることは記されていますが、具体的な比率についての明記はありません。

なのでキカワメトリクスでは暫定的に

上位の加点要素:下位の加点要素=2:1

と規定することにします。

 

なのでこの規定をさきほどのものに当てはめてみます。

 

打撃属性の上位の加点要素は有効打優位性0.520の1つしかないのでこれで決定。

打撃属性の下位の加点要素は2つあるのでその平均値を求めます。

(0.529+0.547)÷2=0.538 ←下位の平均

 

上位は下位の2倍の比率なので

(0.520×2+0.538)÷3=0.526

 

この0.526がロビーローラーの打撃総合優位性になります。

 

 

次に求めるのが組技属性の加点要素のうち、下位の2つの優位性です。

・コントロール優位性

・テイクダウンディフェンス優位性

 

このうち、まずはコントロール優位性を求めていきましょう。

 

7つの試合のポジション獲得時間を見て、本人の獲得時間の合計と、敵7人の獲得時間の合計を比べるわけです。

 

(分:秒)

06:53 ←ロビーローラーのグラウンドコントロールの合計時間

02:57 ←ロビーローラーのクリンチコントロールの合計時間

99:52 ←ニュートラルの合計時間

11:30 ←対戦相手のクリンチコントロールの合計時間

08:12 ←対戦相手のグラウンドコントロールの合計時間

 

ポジション獲得時間は

・グラウンド

・クリンチ

の2つに別れますが、グラウンドでのコントロールはクリンチのコントロールに比べ、ポジション的な優勢度がより上位になります。

 

なのでキカワメトリクスではクリンチの時間のポイント加算についてはグラウンドの時間の1/2と暫定的に規定します。

 

その規定でお互いのポジション獲得時間を算出すると

 

ロビーローラーのポジション獲得時間は

06:53+(02:57÷2)=08:22

 

対戦相手のポジション獲得時間は

08:12+(11:30÷2)=13:57

 

となります。

 

↑の数値をもとに

(本人の数値)÷(本人+対戦相手7人の数値)という計算をすると

08:22÷(08:22+13:57)=0.375

ロビー・ローラーのコントロール優位性は0.375になります。

 

次に

テイクダウンディフェンス優位性を測ります。

 

テイクダウンディフェンス率を出すには

まず敵7人の通算テイクダウン成功率を出します。

敵7人の通算テイクダウン成功率=敵のテイクダウン成功の合計÷(敵のテイクダウン成功の合計+敵の失敗の合計)

 

試合結果データの中のテイクダウンの欄の中の

「of~」となっている数字が「テイクダウン成功+失敗」の値となります。

 

7つの試合の敵のテイクダウン成功の合計は 15

7つの試合の「テイクダウン成功+失敗」の合計は 48

敵7人の通算テイクダウン成功率=15÷48=0.313

 

そして1からこの敵7人の通算命中率を引いた数、

1-0.313=0.687

↑これがロビー・ローラーのテイクダウンディフェンス率となります。

 

但し、テイクダウンディフェンス優位性を出す際は、このテイクダウンディフェンス率同士を比べるのでなく、お互いの通算テイクダウン成功率同士を比べることになります。

 

なので次はロビーローラーの通算テイクダウン成功率を出します。

 

7つの試合のローラーのテイクダウン成功の合計は 3

7つの試合の「テイクダウン成功+失敗」の合計は 4

ロビー・ローラーの通算テイクダウン成功率=3÷4=0.750

 

↑の数値をもとに

(本人の数値)÷(本人+対戦相手7人の数値)という計算をすると…

0.750÷(0.750+0.313)=0.706

ロビー・ローラーのテイクダウンディフェンス優位性は0.706になります。

 

これでロビー・ローラーの組技属性の優位性

・グラップリングテクニック優位性…0.286

・コントロール優位性…0.375

・テイクダウンディフェンス優位性…0.706

3つ全てを出すことができました。

 

なので打撃属性のときと同じく、この組技(グラップリング)属性の3つの優位性をすべて合わせた

「グラップリング総合優位性」

を出すことにします。

 

上記3つの組技属性の優位性のうち

グラップリングテクニック優位性

が上位の加点要素で、

 

・コントロール優位性

・テイクダウンディフェンス率

の2つが下位の加点要素についての優位性となります。

 

なので総合打撃優位性を出すときと同じく、

上位の加点要素:下位の加点要素=2:1

と規定するとして 

 

組技属性の上位の加点要素はグラップリングテクニック優位性0.286の1つしかないのでこれで決定。

組技属性の下位の加点要素は2つあるのでその平均値を求めます。

(0.375+0.706)÷2=0.541 ←下位の平均

 

上位は下位の2倍の比率なので

(0.286×2+0.541)÷3=0.371

 

この0.371がロビーローラーのグラップリング総合優位性になります。

 

では大きな2つのくくりである

打撃総合優位性 0.526

グラップリング総合優位性 0.371

の値が出そろったところで

最終的な

「総合優位性」を出したいと思います。

 

これを出すためには先ほどのポジション獲得時間を使用します。

(分:秒)

06:53 ←ロビーローラーのグラウンドコントロールの合計時間

02:57 ←ロビーローラーのクリンチコントロールの合計時間

99:52 ←ニュートラルの合計時間

11:30 ←対戦相手のクリンチコントロールの合計時間

08:12 ←対戦相手のグラウンドコントロールの合計時間

 

上記5つのうち、ニュートラル+クリンチの合計がスタンドの時間となるので

スタンドの時間=114:19(88.3%)

グラウンドの時間=15:05(11.7%)

合計時間=129:24(100%)

 

そして打撃:グラップリングの加味する率はスタンド:グラウンドとなっているので

 

(0.526×0.883)+(0.371×0.117)=0.508

 

この0.508がロビーローラーの最終的な戦力指数である「総合優位性」になります。